2018年11月29日 (木)

民事控訴審の改革を求める(第2回)―近弁連の意見書―

1 近弁連は「民事控訴審の審理に関する意見書」を発表

近畿弁護士会連合会(近弁連)は、今年2018年8月3日に「民事控訴審の審理に関する意見書」を発表し、大阪高裁を含め全国の8つの高裁と最高裁、法務省に送りました。意見書の要旨は、下記のとおりです。意見書は近弁連のウェブサイトの宣言・決議の欄に掲載されておりますのでご覧下さい。
(アドレスは、http://www.kinbenren.jp/declare/2018/2018_08_03.pdfです)。

民事控訴審の実情と意見書が作成された経緯については、ブログの2018年11月26日の「控訴審の改革を求める(第1回)」の記事に書いています。

 

2 高裁に求める4つの意見 

意見書は、高裁に対する要望として次の4点の意見を述べています。

(1) 裁判官と当事者との十分な意思疎通

控訴審で、裁判所は争点と証拠の評価などについて当事者と十分な意思疎通、コミュニケーションをはかるように求めています。

(2) 適切な釈明権の行使など

高裁が、争点や証拠の評価が地裁、家裁の判決とは異なる結果になる可能性がある場合などは、争点を再整理したり、釈明権を行使したりして、双方の意見を聴取し、あるいは双方に主張立証の整理を促して審理を尽くし、不意打ちの判決にならないように求めています。

(3) 人証の証拠調べ

控訴審は、地裁・家裁で十分な人証の調べができていないときや、地裁・家裁と違う争点で判断をするようなときは、人証の証拠調べをするように求めています。

(4) 第1回期日

第1回期日は、争点や証拠の評価、追加の主張立証などについて当事者と十分な意思疎通、コミュニケーションをはかることとし、争点や証拠の評価などについて認識の共有化ができていないときは、第1回期日には結審せず、続行して審理をするように求めています。

 

3 意見の理由

最近の高裁は、第1回期日で結審する割合が8割近くにまで増えています。しかも、法廷では形式的な問答があるだけで、争点、論点など中身について話しをして、裁判官と当事者が認識を共有化する場になっていません。

このような実情になった主な原因として、2000年頃まで控訴事件が増えて忙しくなった高裁が審理を省略化したことと、2004年の最高裁司法研修所の司法研究(論文)の影響が考えられます。この司法研究でも、少なくとも事前協議と第1回期日の2回の期日を想定していましたが、今は、事前協議はなく、まさに1回の期日だけで終わるのですから、その審理方式は司法研究の立場でも不十分です。

その結果、当事者、代理人弁護士から今の高裁の審理について不満や意見が多数出ています。弁護士にアンケートをして報告があった事例を検討しましたところ、期日が1回だけのために裁判で本来必要な裁判所と当事者との意思疎通、コミュニケーションが控訴審ではほとんどできていない実態がうかびあがりました。1回で無理に終わろうとして、必要な人証調べが行われていない事例があることも明らかになりました。1回で結審して、その後、強引に和解が勧められることについても不満が多数ありました。具体的にどのような問題があったかがわかる22件の事例を意見書は末尾に資料として添付しています。これはいわば氷山の一角で、2012年に大阪弁護士会が会員に対して行った民事裁判に関するアンケート調査では、高裁の審理に問題があったという回答が多かったことから、高裁の審理に問題があり、当事者・弁護士が不満を抱いた事例は、かなりの割合で存在すると思われます。

 

4 提言

問題があると思われた事例を分類すると、今回の意見書にある4つの提言の実施が必要であるという結論になりました。

1つは、裁判所と当事者との間で十分な意思疎通、コミュニケーションができていないので、その点を実現すること、2つは、裁判所が争点・論点と考える点及び疑問に思う点などを質問したり、指摘したりするなどして、裁判所の問題意識を当事者に伝えること、3つは最後の事実審であり、必要な人証調べなども行うべきであること、4つは、第1回期日での結審を原則とせず、第1回期日には充実した協議を行い、当事者双方が第1回期日での結審に異議がない場合を除き、原則として第2回期日以降の結審とするのが望まれることです。

控訴審が迅速、公正、充実したものとなるためには、訴訟代理人である弁護士も、控訴審での訴訟活動において、書面や証拠の提出期限を遵守することはもちろん、できるだけ迅速に主張立証をすることなどが求められます。意見書は、その点も確認しています。ただ、代理人が努力しても、証拠の採否も、結審の時期も、すべて裁判官の権限ですので、決定がされれば、当事者、代理人は手段がありません。

弁護士法(1条2項)は、弁護士の使命の1つとして、法律制度の改善に努力することを定めており、近弁連は、司法の発達改善に関する活動を目的の1つにしています。そこで、近弁連は、この度、控訴審の現状を憂い、審理の改善・改革を求める意見を出しました。

控訴審の裁判が、当事者から、丁寧で、親切であったと言われるように、審理の仕方が改められることを期待いたします。(弁護士 松森 彬)

2018年11月26日 (月)

民事控訴審の改革を求める(第1回)―高裁の控訴審の実情と問題点―

1 高裁の大きな役割
 地裁や家裁の判決について不服があるときは、控訴をして、高等裁判所の判決をもらうことができます。
 高等裁判所は、全国に8か所の本庁と5つの支部があります(東京、大阪、名古屋、名古屋高裁金沢支部、広島、広島高裁松江支部、福岡高裁、福岡高裁宮崎支部、福岡高裁那覇支部、仙台高裁、仙台高裁秋田支部、札幌高裁、高松高裁)。
 2015年(平成27年)は、全部で1万5066件の控訴事件がありました。地裁・家裁の判決は、高裁で2割から2割5分の割合で全部又は一部が変更されています。判決以外に高裁の裁判官の意見で逆転した内容の和解がされる例もあり、実質的に判断が変る率は結構高いといえます。ドイツでは、少し前の数字ですが、高裁で48%の率で判決が変更されているといいます(最高裁の平成11年の司法制度改革審議会における意見陳述)。これらの事実は、裁判は人によって相当に判断が異なることになることを示していると思います。

変更がかなりある理由は、地裁は一人の裁判官で判断するケースが多いのですが、地裁の裁判官は平均して若く、裁判官としても社会人としても経験が少ないため、事実の見方や法律の解釈が必ずしも適切ではないこともあるからです。高等裁判所の裁判官は地裁の裁判官よりも年齢や経験も上であることが多いうえ、3人の合議で決めますので、地裁の判断の誤りを是正することが少なくありません。このように、当事者や代理人の弁護士からしますと、地裁や家裁の判決が納得のいかないときには高裁での是正を期待することが大です。

しかも、かつては三審制と言われたように、最高裁に上告することがありましたが、民事訴訟法が改正されて最高裁への上告が制限されましたので、憲法に関わるような事件は別にして、通常の民事事件は控訴審が事実上最後の裁判になります。その意味でも高裁の役割と責任は大きいといえます。

2 高裁の裁判に対する当事者・代理人弁護士の不満

かつては、高裁でも証人調べがあり、1985年(昭和60年)当時は、控訴審の事件のうち、当事者尋問を31%の事件で行い、証人尋問を28%の事件で行っていました。ところが、控訴事件が増えるなかで、高裁は証人調べをしないようになりました。現在は、当事者や証人の証言を聞くのは、全体の1%になっています。

また、高裁の裁判が1回だけの期日で終わるのは、1975年(昭和50年)当時は全体の僅か15%程度でした。そのときの控訴事件数は8332件でしたが、毎年、控訴事件数が増え、25年後の2000年(平成12年)には2倍近い1万5350件になりました。弁護士会は裁判官の増員を求めてきましたが、裁判所は、増員により裁判官の給与体系が引き下げられることをおそれ、長年にわたり増員の必要はないという態度を取ってきました。そのため、忙しい高裁への赴任が決まると、裁判官は仲間内の冗談で懲役3年だと言うこともあったようです。忙しい高裁の裁判官は徐々に証人調べを減らし、裁判期日の回数を減らしました。当初は自然発生的なものであった可能性がありますが、平成に入った前後(1989年前後)から東京高裁で意識的に証人調べをあまり行わず1回で結審する事後審的運用と呼ぶ審理方式を始め、それが全国に広まりました。2004年(平成16年)には、東京と大阪の高裁の裁判官4人が司法研究として「民事控訴審における審理の充実に関する研究」(法曹会)という論文を発表し、この事後審的運用をすべきとする提案がされました。高裁の裁判官は、ほぼ全員がこの司法研究を読んだといいます。それでも、この提案は、第1回期日の前に事前協議の期日を開くという提案をしていましたので、実質は少なくとも2回の期日を開くという提案だったのですが、その後、事前協議は裁判官にとって負担であるとして行われず、第1回の期日で終わるという部分だけが広まりました。現在、大阪高裁に14の部がありますが、事前協議をしている部は2つだけです。他の12の部は事前協議をせずに、原則として1回で結審するという運用をしています。その分、コミュニケーションが不足しています。なお、事前協議は裁判長は立ち会わず、主任の陪席裁判官だけが非公開の部屋で行うものですので、私たちは、通常の弁論期日の手続きで行うべきだと考えています。もちろん、高裁の裁判官の全員が事後審的運用をしているのではなく、なかには1回の期日で終わることを原則とせず、当事者や証人の話も聞き、丁寧な審理をする裁判官もおられます。ただ、多くの裁判官は原則として1回で結審するというやり方をしています。

 高裁の民事裁判は、2000年(平成12年)ころから事件数は横ばいで、増えていないのですが、この審理の仕方が当たり前のようになり、1回目の期日の結審だけはどんどん増え、2013年(平成25年)には78%に達しました。しかも、その中には、高裁の裁判官らは地裁の原判決と違う論点で逆の判断をするような場合でも、法廷で裁判官が質問も意見も何も言わないまま、逆転の判決を出すといった不意打ちの裁判もたくさんあります。最高裁判事を務められた元弁護士の講演会がありましたが、上告されてくる事件の記録を読んでいると、高裁の不意打ち裁判が気になったと言っておられました。

このような審理の仕方になったのは、古くは控訴事件の増加であり、その後は司法研究が大きな原因であるといえます。民事訴訟法の改正や裁判迅速化法の制定も一定の影響があったと思いますが、訴訟法は控訴審の性格は1審の続きであるとする点は変えておらず、裁判迅速化法もここまでの方式を求めているものではありませんので、変化の大きな原因は前記の2つと考えられます。法律が変わったのでもなく、法律家や学者、市民による議論で決まったものでもなく、なし崩しに裁判官の考え方だけで進められてきた点に、私は一番の問題があると思います。

 地裁の審理は、通常、期日が何度も開かれ、その都度、当事者(代理人の弁護士)と協議をしますので、裁判官は、当事者の意見を何度も聞き、自分でも何度も考えることになります。また、3人の裁判官で審理する合議の事件の場合は、裁判官同士で議論をする機会が何度もあります。ところが、今の高裁の裁判は、特別に難しい事件は別にして、ふつうは第1回期日までに地裁の裁判記録をそれぞれが読んでおいて、期日の前日又は数日前に3人で一度協議するだけで原則として結論を出しています。弁護士が、高裁の裁判では、裁判官が何を考えているかわからないというのは、期日にほとんどやりとりをしないからです。丁寧な審理をされた或る高裁の裁判官は、疑問に思ったことなどを当事者に尋ねたり、聞いたりして、あるいは証人の証言を聞くことで、新たなことに気付いたり、考えを改めたりすることもあったと言われます。仕事の性格上、裁判官には事実認定や法的解釈について決定する権限を与えられていますが、しょせん、人間のすることであり、思い違い、考え違いがあるかもしれません。今の高裁の審理の仕方は、そのような配慮が欠けていると思います。裁判は、神主のご託宣ではなく、十分な証拠調べと十分な議論という手続を踏まえての人のする判断ですから、裁判官には謙虚な姿勢が求められます。そして、裁判手続をすることについて基本的人権を持つ国民・市民に対して、国の公務員として、できるだけ丁寧に親切な審理をすることが求められると思います。1回で無理に結審せず、議論や立証のために複数回の期日を持つことになっても、それほど裁判が遅延したり、裁判官の負担が増したりするとも思えません。

3 弁護士会の取り組み

大阪弁護士会が2012年(平成24年)に行った民事裁判についてのアンケート調査で、高裁の1回結審や証人調べをしない審理について多くの弁護士が問題であると考えていることがわかりました(日弁連「自由と正義」2013年8月号掲載の「弁護士は民事裁判をどう見ているか」の記事参照)。私は、このアンケート調査を行ったプロジェクトチームの座長をしましたが、控訴審の実情は当事者、代理人弁護士にとって放置できない問題だと多くの委員が思いました。ある弁護士は、「高裁の裁判官の関心がわからないまま、引っ繰り返されたり、引っ繰り返したりということがあり、手続が尽くされていない」と書いておられました。

そこで、大阪弁護士会では、2016年(平成28年)1月に司法改革検証・推進本部の委員会に「高裁問題プロジェクトチーム」を設けて、控訴審がなぜこのようになったかを調べるとともに、会員に具体的な事例を聞くことにしました。プロジェクトチームの調査報告と意見の要旨は、「民事控訴審の審理の充実―実態調査を踏まえた提言―」(上、中、下)(判例時報2342号、2345号、2347号)に掲載されていますので、ご覧下さい。

その後、この問題は、大阪、京都、兵庫県、奈良、滋賀、和歌山の5弁護士会で組織する近畿弁護士会連合会(近弁連)で取り上げられることになり、近弁連は、「民事控訴審の審理に関する意見書」を理事会で承認して、2018年(平成30年)8月3日に発表しました。近弁連は、意見書を大阪高裁を含む全国8つの高裁と最高裁、法務省に送付し、審理の改善改革を要望しました。最近、大阪高裁で審理中の裁判で、裁判官が結審を急ぎますので、弁護士会の意見書を読んでおられるかを尋ねたところ、読んだということですので、意見は現場の裁判官の耳に届いているようです。意見書は近弁連のウェブサイトの宣言・決議の欄に掲載されており、ご覧いただくことができます(アドレスは、http://www.kinbenren.jp/declare/2018/2018_08_03.pdfです)。近弁連の意見書の内容については、次のブログ記事に書きます。(弁護士 松森 彬)

2018年11月15日 (木)

外国法事務弁護士(外弁)の今

外国の弁護士は、法務省の承認を得て、日弁連に「外国法事務弁護士」の登録をすることにより、日本で外国法に関する仕事をすることができます。日本法に関する仕事はできません。この外国法事務弁護士(略して「外弁」と言われます)の制度ができて、今年30年になります。

渉外法律業務の需要が高まってきたことと、アメリカなどから法律業務についての自由化を求められたことから、1986年(昭和61年)にこの制度ができました。外国の弁護士資格を持っているといっても日本法の知識がありませんので、日本法についての仕事や訴訟はできないことにされました。また、互いの国が同等に外国の弁護士を受け入れているという相互主義も要件にされました。ただ、その後も規制緩和の要請があり、私が日弁連の理事を2度したときも、外弁制度をどうしていくかは日弁連が頭を悩ますテーマの1つでした。

外弁制度は、度重ねる改正があり、現在では、日本の弁護士と共同事業をしたり、日本の弁護士を雇用したりすることもできるようになっています。世界的にみても、開放度の高い外国弁護士の受け入れ制度になっていると言えるようです。そのなかにあって、この制度が懸念された問題を生ずることなく需要に対応してきていることは、この間、日弁連、法務省をはじめ多くの関係者による丁寧な議論と検討があったからではないかと思います。

外弁の人数は、2018年7月1日現在、411人です。アメリカの弁護士が220人、イギリスの弁護士が78人、中華人民共和国の弁護士が36人、オーストラリアの弁護士が27人で、この4か国の登録者で8割を超えます。登録先はほとんどが東京で381人、大阪は10人、愛知県は5人です。仕事は、海外との商取引、企業の買収、投資などについての法律業務が多いようです。

日弁連の機関誌「自由と正義」(2018年10月号)に外弁制度30年の特集が組まれていました。そこに、中国の外弁が増えているという指摘がありました。増えている理由は、1つは中国の弁護士試験の変更で弁護士が増えていることと、中国企業の海外投資が増えたことではないかと言われています。

日弁連が頭を悩ましてきた外弁制度ですが、おおむね順調に来ているようです。(弁護士 松森 彬)

2018年10月 1日 (月)

司法の国民的基盤をどう育てるか(司法シンポジウムが開かれました)

先週土曜日は、日弁連主催の「司法シンポジウム」(第28回)があり、大阪弁護士会でもテレビ中継がありました。2年前の司法シンポジウムで、司法は国民的な基盤を持つことが重要であることが確認されましたが、今回は、その実践のための課題として、次の4つのテーマが取り上げられました。

1つは、裁判官制度の国民的基盤の1つである「弁護士任官制度」の現状と課題です。

英米では、裁判官はすべて弁護士経験者のなかから優れた人が選任されます。韓国も、最近、その制度(「法曹一元制度」)に変えました。日本は、司法試験に合格したあと、すぐに裁判官と弁護士、検事に分かれますが、裁判官の多様性を高めるため、司法改革で、弁護士からも多数の裁判官を選任する「弁護士任官制度」が決まりました。現在、裁判官の数は全部で3000人ですが、日弁連は毎年30人ずつ任官者を選ぶことを目標にしました。ただ、弁護士で裁判官になることを希望する人が少なく、最近は年間1人から3人という少なさです。広報活動なども行っているのですが、希望者が少ないうえ、裁判所が審査で受け入れない例も多く、「弁護士任官制度」の根本的な改革が求められます。シンポジウムでは、弁護士から裁判官になった人が多数出演するDVDが上映されました。弁護士経験が裁判官の仕事に役に立っているという話しが印象的でした。

2つは、司法改革でできた「裁判員制度」の現状と課題です。

この10年間に裁判員裁判で判決を受けた被告人の数は1万人を超えました。犯罪名は強盗致傷と殺人が多く、この2つで全体の半数になります。シンポジウムでは、裁判員経験者による交流会が全国に7つもあるとの報告がありました。裁判員制度については、経験してよかったと感想を述べる人が96%にもなりますが、裁判員候補者に選ばれても裁判所に行かない人が3人に1人にもなるようです。法律上は国民の義務ですが、勤務先の理解が得られないなどの理由から辞退を希望する人が少なくありません。裁判所によっては、呼出状に勤務先の協力を求める書面や裁判員経験者の感想文などを入れたりして、理解を求める努力をしているようです。裁判員を経験した人が周りに色々話すことができれば、裁判が国民に身近になると思いますが、今の守秘義務の範囲があいまいで、制度の啓蒙や広報の妨げになっていると思われます。裁判員制度は来年(2019年)5月に制度開始から10年を迎えます。日本の法律と司法は、明治時代に西洋から輸入したもので、国民の信頼を土台にしているとはいいがたいところがありましたが、そのイメージを変えていくために、裁判員制度は今後も大きな役割を果たすように思います。

他に、生徒、学生等に対する「法教育」の取り組みのテーマと、「市民と司法をつなぐ取り組み(マスメディアの役割など)」のテーマが取り上げられました(私は他の用事で参加できませんでした)。

日弁連は、1973年に大阪で第1回の司法シンポジウムを開きました。テーマは、裁判の遅延と裁判官の増員でした。そのときは私は弁護士になった2年目で、その会議は覚えていませんが、司法制度のあり方には関心がありましたので、その後、何度か実行委員にもなりました。弁護士会は、一貫して司法のあるべき姿と市民のための司法の実現について議論してきたと思います。今後も、その視点での活動が求められていると思います。(弁護士 松森 彬)

2018年9月25日 (火)

木内道祥元最高裁判事の講演をお聞きして

今日は、弁護士会の研修で、昨年まで最高裁判事をされていた木内道祥(きうちみちよし)弁護士が「最高裁判事として考えたこと(上告棄却・上告不受理事件を題材にして)」と題して講演されましたので、聞いてきました。

木内さんは、私も弁護士会の委員会などでよく存じ上げている大阪の弁護士で、人柄も能力も立派な方です。今日は、最初に、「裁判は、細い管を通して社会を見る仕事だと思った」との感想を述べられました。

そして、最高裁には年間約9000件の事件が挙がってくるが、最高裁に上告する理由は法律で制限されているので、最高裁が実質的に判断する事件は限られており、多くは簡単な理由(いわゆる三行半)で棄却又は不受理になるとの説明でした。

木内さんは、判例集などに掲載された有名な事件(家族法、消費者法、倒産法などの事件やNHK受信料の事件)で反対意見や個別意見を書いておられますが、今日は、上告を棄却したり、上告を受理しなかった事件のなかから、裁判記録を読んで地裁と高裁の裁判について感じたことをお話しになりました。

印象的だったお話しを書きますと、地裁の裁判には、法律を知らずに間違った判決や、非常識な事実認定がされた判決や、裁判官のセンスが悪く、解決になっていない判決などがあったということです。そのような地裁の判決は控訴されて多くは高裁で是正されるのですが、高裁の裁判も問題だと思うことがあるようです。

高裁の裁判の1番の問題は、地裁と違う争点で逆転の判決を出す不意打ちの裁判であるとのお話しでした。具体例として、最高裁が平成29年1月31日に、「節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに縁組が無効であるとはいえない」とする判決を出した事件をあげられました。1審の地裁は節税のための養子縁組も有効であると判断しましたが、控訴審の高裁は無効としました。最高裁は、有効であると判断し、法令違反として高裁判決を破棄しました。木内さんは、高裁では判断を逆転させた論点を意識した審理がされておらず、不意打ちではないかと思ったとのことです。同じように感じた事件は他にもあったとのことです。事実認定をするのは高裁までで、最高裁は事実認定はできないので、高裁までの事実審理がしっかりできていないときは困ったと言っておられました。

近畿弁護士会連合会は、今年8月3日に高裁の審理の充実を求める意見書を全国の高裁に送りましたが、木内さんも最高裁で裁判記録を読みながら、同じような感想を持たれたようです。木内さんは、刑事裁判は裁判員制度の導入で争点を明確にした裁判をするようになっているが、民事裁判は後れているのではないかと指摘されました。最近1回で結審することが増えている高裁の裁判ですが、もっと当事者(国民、代理人弁護士)とのコミュニケーション、意思疎通をはかり、不意打ちというような印象を与えない裁判が望まれると思います。(弁護士 松森 彬)

2018年8月 3日 (金)

離婚訴訟で問題になる点

毎年この時期は弁護士会が主催する夏期研修があります。今日は、「離婚訴訟の進め方」がテーマでした。最近の離婚訴訟の実情や問題について、講師(園部伸之判事)のお話しを聞いてきました。

離婚訴訟で争点になるのは、離婚をするか否かだけでなく、慰謝料や財産分与をどうするか、子の親権者や監護者をどちらにするか、子との面会をどうするかなども決める必要があります。自宅がローン付きの場合にどう分けるか、あるいは不貞の相手に対する慰謝料請求をどう決めるかなどの問題があることもあります。

弁護士と裁判官は、これらの多数の問題を、どのような手続で、どう取り上げて解決をはかるかに心を砕くことになります。全部の一体解決が望ましいですが、親権者や面会の問題が一番対立しているようなときは、それを別の調停手続にして先に解決をはかることもあります。

最近、離婚訴訟は長くかかる事件が増えていますが、原因は財産分与の紛争が増えているからだと思うとの講師の説明でした。夫婦が結婚してからできた不動産や預金などの財産は夫婦で分けることになりますが、結婚前から持っていた財産や親から相続した財産などは分与の対象にはなりません。そこで、財産分与の対象になるかどうかがまず問題になります。また、相手が管理している財産を明らかにしないこともあります。そのようなときは、裁判所に申し立てて銀行などへの調査を依頼することができます。

親権者・監護者について争いがあることもあります。どちらが親権者や看護者になるのが適切かについて裁判所の調査官が調査をします。10歳以上の子の場合は子の意見を聞くこともあります。

裁判官が和解案を作って双方に提案し、双方が受け入れて解決することもありますが、和解がまとまらないときは、本人尋問をします。本人尋問では、双方が経過を予め陳述書に書いて出したうえ、1時間位、法廷で証言をすることになります。

民法や人事訴訟法などの法律は、離婚を認める基準や裁判手続の一般的なことを決めているだけですので、実際の裁判で、どのように進めるかは、裁判官と弁護士がどれだけ知恵を絞り、努力するかで決まってきます。今日の講師を務められた裁判官は10年目の若い方でしたが、代理人・当事者と一緒に、できるだけ納得のいく手続をしようとしておられるのがわかりました。実務家のやりがいや責任を感じた研修でした。(弁護士 松森 彬)

2018年6月30日 (土)

評価が高い裁判官、低い裁判官(4年目の調査)

大阪の裁判官の審理の仕方について弁護士が評価した結果が大阪弁護士会の月刊誌(2018年6月号)に掲載されました。この取り組みが始まって今年は4年目になります。どのような意見が多かったかをご紹介します。

大阪の高裁、地裁、家裁で民事事件と家事事件を担当している裁判官は全部で204人です。評価は、記録の把握、争点の整理、証拠調べ、和解、話し方態度、判決、総合評価の7項目について5段階で評価します。その理由も記載します。今年は弁護士87人から196通の意見が寄せられました。

大阪のような大都会では、裁判官の人数が多いので、一人の弁護士が同じ裁判官にあたることは少なく、1回だけのこともあります。また、評価情報を寄せるのは、大変良かったときか大変悪かったときが多いと思います。そういうこともあり、今年も意見が寄せられたのは、全体の半分弱の84人の裁判官についてでした。

複数の意見があった裁判官46人について、特徴を言いますと、評価の高い裁判官と低い裁判官があり、その差が大きいことです。国民の多くの人は、裁判官はみんな文句のつけようがない人ばかりと思っておられるかもしれませんが、そうではありません。上位13人は平均点が4点以上でしたが、下位の6人は平均点が2点台でした。4年間にわたる調査で、上位の裁判官は継続して上位にランクされ、下位の裁判官は継続して下位にランクされる傾向が認められたそうです。裁判官は裁判官の独立を保障するため、10年間は首になることはありませんが、仕事が仕事であるだけに、両方の訴えをよく聞いて、公正で十分な審理をしてもらう必要があります。

1位となった裁判官の評価理由には、「毎回、期日前に双方の主張をまとめた暫定的な争点整理案を送付し、当日は認識に齟齬がないかを確認している」、「当事者の話に耳を傾け、気持ちをくみ取ろうとしている」などの意見がありました。

また、評価が低い裁判官は、「記録を十分に検討せず、和解を押しつける」、「先入観にとらわれ、心証を固めるのが早すぎる」、「感情的になる。高圧的な話し方をする。」などの理由が付されていました。

高裁の裁判官については厳しい評価になっているようです。「説得的な判決であった」とか、「本人の意見も聞いて和解の勧告があり、良かった」などの高い評価がある裁判官がある一方で、「判決が争点に全く触れていない」、「重要な争点であること予告しているのに、取り合おうとしない」などの不満がありました。1回結審が多く、当事者とのコミュニケーションが十分とれていないことも背景にあると思います。

大阪高裁と地裁で刑事事件を担当している裁判官は93人です。弁護士47人から164通の意見が寄せられました。項目は、身体拘束、公判前整理、証拠調べ、訴訟指揮、話し方・態度、判決、総合評価の7項目です。2通以上の意見があったのは36人の裁判官についてで、平均4点以上が10人おられる一方、2点台が7人でした。刑事事件を担当している裁判官も、高い評価の人と低い評価の人の差が大きいことがわかります。

評価点数が高かった10人のうち6人は4通以上の情報提供があり、多くの弁護人から共通して高い評価を受けていると言えます。

今回は、評価した理由が書かれていたものが多かったそうです。裁判官の言動を批判する評価がある一方、裁判官の発言やふるまいに弁護人や被告人が感銘を受けたという意見も多く寄せられました。今回のまとめにあたった委員の弁護士は、どのような裁判官が理想的な刑事裁判官であるのかという根本的な問いに対する解答がこれらの意見に含まれているように思うと感想を述べています。

弁護士も、依頼を受けた当事者・国民に代わって、その件の事実経過と法律の適用をわかりやすく裁判官に説明し、当事者とは聴取、報告、協議等を頻繁に行って、早期に適切な証拠と文献などを提出するとともに、相手方に事実の説明や資料提出を求め、裁判官が正確に事実関係と適用すべき法律論を理解し、ましてや誤解をするようなことがないように注意を払い、その事件の迅速で適切な解決に向けて努力すべき義務があります。同じ事件はなく、すべて異なり、代理人・弁護人がすべきことは限りなくあると言ってよいと思います。今年の報告を読みまして、この取り組みは裁判官の仕事ぶりの向上に、さらには弁護士の民事代理人、刑事弁護人としての仕事の反省や向上にもつながるものだとの思いを強くしました。(弁護士 松森 彬)

2018年6月24日 (日)

不動産の共有が紛争になる場合

不動産の共有は、弁護士が扱うことが多い問題です。どんな場合にどういう問題があるかをご紹介します。

不動産を共有にするのは、主に2つあると思います。一つは、相続のときです。もう一つは、親子や夫婦で不動産を買うときです。前者の相続のときは、両親の一人がなくなり、もう一人の親が自宅に住んでいるようなときに、とりあえず親と子で共有の相続登記をしておくことが多いと思います。また、親子や夫婦で不動産を買うときも共有にしますが、このときは、代金を出しあった額に応じて、持分の権利割合を決めておくと、将来問題になりにくいと思います。ただ、親だけ、あるいは夫婦の片方だけがお金を出したようなときは、登記の持分の割合が、そのまま権利の割合を意味するものかをめぐって争いになることがあります。また、土地の共有者の一人が建物を建てて使用しているときなどは、土地の使用権の割合をいくらとするかをめぐって紛争になることもあります。親族の間柄ですから、はっきり決めていなかったり、書類に書いていなかったりするので、もめやすいのです。

共有は、共有者の一人が申し出て、いつでも共有状態を解消する(分割すると言います)ことができます。普通は、共有者の話し合いで決めますが、まとまらないときは、簡易裁判所の調停や、地方裁判所での訴訟ができます。

共有物の分割の方法は3つあります。一つは、現物を分ける方法です。土地であれば、それを分割します。二つは、第三者に売ってお金にして分ける方法です。三つは、共有者の一人が買い取り、他の人にはお金を渡す方法です。親族間ですから、お互いが別々の土地に共有持分を持っていることもあり、そのような場合は、持分を交換して解決することもあります。

共有は、決めるときは親族間の仲がよいときですから、まさか将来もめることになるとは思わず、気軽に利用するのですが、現金・預金と違って分けにくいことも頭に置いておかれるのがよいと思います。そして、登記はできるだけ実質的な権利の割合に合わせておくことや、もし、登記の割合などが実際と異なるときは、書面に書くなどして関係者が認識しておくのがよいと思います。

共有は、親族間のことが多く、多くは話し合いで解決できると思いますが、ちょっとした行き違いで対立することもあります。弁護士に相談して、どうするのが法律的に正しい解決かや、どう話しを進めるのがよいか等を聞いておかれるのがよいと思います。(弁護士 松森 彬)

2018年3月31日 (土)

今の民事裁判の問題(民事訴訟法施行20周年シンポジウム)

今の民事訴訟法が施行されたのは1998年1月でしたので、今年1月でちょうど20年になります。日弁連は、日本民事訴訟法学会の協賛を得て、民事訴訟法施行20周年シンポジウムを3月29日に開催しました。大阪でもテレビで視聴ができましたので、議論を聞いてきました。

20年前の新法で改正された主な点は次の4点です。①争点及び証拠の整理手続の整備、②証拠収集手続の拡充、③少額訴訟手続の創設、④最高裁への上告の制限です。今回のシンポジウムは、このなかの①の争点整理が取り上げられました。

日本の民事裁判は、かつては、やりとりは当事者の代理人である弁護士に任され、裁判官はあまり指揮をしませんでした。そのため、裁判のなかには、互いの主張がどうなるかがわからず、漂流式であると揶揄されたり、小刻みにだらだらと主張がなされ、五月雨式だと批判を受けたりする裁判もありました。その点は、新法ができたあと、裁判官と弁護士の努力で、かなり改善されてきましたが、現状の審理の課題について議論がされました。

最初に、法改正に携わられた高橋宏志教授が講演をされ、「改正点のなかの人証の集中証拠調べは予想以上に定着したが、新法のねらいの一つであった口頭議論での争点・証拠整理は、20年経って当時の熱気が失われ、形骸化しているように思う」と話されました。私は、今の民事訴訟に必要なものとして「口頭主義」が指摘されて、大変心強い思いがしました。私たちは、今、大阪弁護士会で、高裁の民事控訴審の形骸化を問題にして調査・研究をしているのですが、高裁では口頭議論がほとんど行われなくなっています。

パネルディスカッションでは、裁判官、弁護士、学者が争点整理の実情と改善策について議論されました。「少しずつ長期化しているのでは」、「口頭でのやりとりが大事だ」、「弁護士の準備が不足していることも」、「裁判官ももっとイニシャティブをとるべきでは」、「裁判所と弁護士が争点と証拠について認識を共有化することが必要だ」などの意見が出されました。「裁判官と弁護士ともに研鑽がもっと必要だ」という点は一致した意見であるように思います。

私は、この日のシンポジウムの議論を聞いていて、2点気になりました。

一つは、最近、認識の共有化をはかるために裁判官が「暫定的心証開示」をするという提案があり、この日も意見交換がされましたが、その内容については人により理解が異なり、まだ議論がいる課題であると思います。私は、裁判官は予断と偏見を持たずに審理にあたるべきで、必要なことは、主張や立証を確認したり、自分の持った疑問点を質問したりすることであるように思います。

また、「争点の整理」というのは、裁判官の仕事に着目した言葉遣いであると思います。今、争点整理と呼んでいる段階を、新民事訴訟法ができる前は、「弁論」と言っていました(当事者が意見を述べたり、議論したりすることに着目していたのです)。そこで、「弁論の活性化」という名称で議論していたのですが、その議論が新法の争点整理手続の整備につながりました。いうまでもなく、裁判で重要なことは、事実と法的主張が当事者からしっかりなされ、それについて充実した議論と証拠調べがなされることです。争点の整理は、そのための手段にすぎません。国民の訴えを聞くことが裁判という作業の要であって、争点の確認は、裁判官が効率よく判断すべき点を探るための工夫だともいえます。「整理する」という名のもとに、当事者の訴えや主張が軽々に切り捨てられたり、主張の確認や整理が裁判の中心だと誤解されて、主張だけで勝ち負けの心証が形成されたりすることがないように、実務法律家は注意する必要があります。

シンポジウムの議論を聞いておられたベテラン弁護士が、「裁判は弱者が切り捨てられないようにする配慮がいる」と感想をもらされましたが、大事な指摘だと思いました。実際の世の中は契約や取り決めをいつも書面にしているわけでなく、また、会社と個人では情報に大きな差があり、裁判をしながら証拠を収集することも必要になります。裁判では、そのような配慮も必要で、争点と証拠の整理を急ぐあまり、弱者が切り捨てられないようにすることが必要です。

(弁護士 松森 彬)

2018年2月28日 (水)

遺族年金を内縁の妻は受けとることができるか(行政と裁判所で基準が異なります)

遺族年金は、「その人によって生計を維持していた遺族」が受けとることができます。婚姻届を出していない内縁の妻(あるいは夫)でも、事実上婚姻状態と同じであった人は、遺族年金を受けとることができます(ここでは内縁の妻について説明しますが、内縁の夫の場合も同じです)。

問題になるのは、内縁の妻と戸籍上の妻の両方があるときです。どちらが年金を受けとることができるかをめぐって、裁判になることもあります。法律(厚生年金保険法)の解釈がどうなっているかですが、婚姻制度を法的に保護する必要があることと、年金は遺族の生活を保護するためのものであることの両方の趣旨を考えて、「戸籍上の婚姻関係が形骸化していて、事実上離婚状態にあったときは、内縁の妻が年金を受けとることができる」と解されています。婚姻関係が形骸化しているかは、別居期間、音信・訪問の有無、経済的な依存関係の有無、婚姻関係を修復する努力の有無などを見ることになります。

婚姻関係が破綻しているかどうかの判断基準は、行政と裁判所で少し異なります。いずれも国の機関であるのに基準が異なるのは国民としては困ったことですが、現実にそうですので、その点をご説明します。

行政(厚生労働省、日本年金機構)は、別居期間は「おおむね10年程度以上」とする基準(局長通知)を設け、それより短い期間では、婚姻関係はまだ破綻していないと判断することが多いようです。しかし、裁判所は、別居期間が6年10か月のケースでも婚姻関係は破綻していたとして内縁の妻が年金を受けとることができると判断しました(大阪地裁平成27年10月2日)。民法の改正案として、別居が5年以上続いているときは離婚を認めてよいのではないかという提案がありますが、裁判では、別居が10年より短くても婚姻関係は破綻していると認めてよいと考えられています。

また、生活費などが戸籍上の妻に支払われていたときは、行政は婚姻関係は破綻していないと判断することが多いのですが、裁判所は、お金の支払いがあっても、婚姻関係の実体が失われているときは内縁の妻を配偶者と認めています(大阪高裁平成26年11月27日判決等)。

行政は、判断にバラツキが出ないように基準(厚生労働省局長通知)を設けていて、たとえば別居期間はおおむね10年程度以上としており、行政の職員は、その基準に従って仕事をします。しかし、局長通知は法律ではなく、法的効力はありません。裁判では、法律の趣旨に基づいて個別のケースごとに判断しますので、たとえば10年より短い別居期間でも内縁の妻が配偶者と認められることがあるわけです。

私は、内縁の妻の年金の問題については、最近のいくつもの判例で、法律の解釈が確立していると思いますので、行政は、今の局長通知を早急に判例に則した内容に改正すべきであると思います。行政の基準を改正しませんと、裁判に訴えた国民は年金を受けとることができますが、裁判をしない国民は年金を受けとることができないという不公平な結果になるからです。(弁護士 松森彬)

その他のカテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

2019年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
無料ブログはココログ