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2019年1月15日 (火)

「親切な裁判」と「不親切な裁判」

 長い間、続いていた離婚訴訟が、大阪高裁の裁判官の尽力で、昨年、和解(合意による訴訟終了)により終了しました。この件で、私は、「妥当な判断」と「親切な裁判」が当事者にとって如何に有り難いものであるかを痛感しました。

 裁判は、夫が別の女性と同棲し、妻に離婚を求めたものでした。私は、妻から委任を受けました。妻は、離婚を拒否しており、裁判による離婚が認められるかという争点があったうえ、暴力や財産をめぐって事実を解明するべき問題が多く、家庭裁判所の調停と訴訟で4年かかりました。家裁は、夫婦間の財産の争いのいくつかを民事事件であるとして地裁に移送していましたので、妻は地裁での訴訟も抱えていました。家裁の判決は、妻からみると夫の言い分を不当に取り入れたものであり、妻は高裁の判断を仰ぐため控訴しました。

 大阪高裁には14の部がありますが、この事件が係属した部の裁判長は、第1回の期日に、審理の継続を決めるとともに、「時間がかかっているので裁判所で和解案を提案したいがどうか」と発言され、「和解案は、高裁の事件だけを解決する案と、地裁で係属中の事件も含めて解決する案の二つを作って提案する」とのことでした。地裁で審理中の事件も一緒でなければ当事者にとって合意による係争終了は考えにくいことでしたから、この提案は当事者双方にとって有り難いことでした。

 

 地裁に係属している裁判の準備書面と証拠は高裁にありませんので、夫側と妻側がそれぞれ書類の写しを高裁に提出し、高裁の裁判官らは、それを読んでそちらの件の和解案も考えるとのことでした。
 書類を提出して約1か月後に、高裁から2通りの和解案が双方に示されました。双方は、地裁の事件も含めて一挙に解決する和解を希望し、2回協議した結果、修正した案で和解が成立しました。

 裁判官は、公務員であり、事件をたくさん解決したからといって給料が増えるわけではありません。割り当てられた手持ちの裁判記録に加えて別の裁判の記録を読むというのは仕事を余計にすることになります。それでも、この裁判長らは、当事者が困っているだろうという思いから、手間をいとわずに係争の解決に尽力されました。
 すべての裁判官が、このように親切であれば、国民の裁判所に対する敬意と感謝、そして信頼はもっと高まると思いました。

 私は、同じこの事件で、逆に「裁判所の不親切」も経験しました。第1審の家裁の裁判官ら(合議体)は、夫婦間の或る財産問題(夫から妻への毎月一定額の支払の約束)について約2年間、審理をしておきながら、判決で、夫婦間の債権債務の存否は家事事件ではなく民事事件であり地方裁判所で審理されるべきであるとして、離婚事件では判断しないとしました。そこで、妻は地裁に改めて提訴して、一から審理することになりました。家裁の判断の当否に疑問がありますが、仮に、家裁の裁判官が、そのように解釈するのであれば、2年間の審理中に判断を示すべきであったと思います。今回は、たまたま親切な高裁の裁判官に当たったので一挙に解決ができましたが、そうでなければ、解決の遅れにつながったと思います。
 

 このように、裁判官次第で「親切な裁判」もできるのですが、「不親切な裁判」も行われています。アメリカでは、国民の裁判所に対する信頼が高いと聞きます。裁判所に行けば納得のいく手続と結果が期待できるというイメージがあるのでしょうか。最近の高裁は、何も言わずに1回で結審して、なかには逆転判決をすることもあり、弁護士には、高裁は何を考えているか、何をするかわからないので怖いという人もあります。裁判所は怖がられるところではなく、この裁判官らが実践されたように、親切で、感謝されるところであってもらいたいと改めて思います。(弁護士 松森 彬)

 

 

 

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