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2019年1月の記事

2019年1月27日 (日)

高裁の裁判の仕方(民事控訴審の訴訟活動)

1 民事控訴審の充実のために

 

2018年11月16日、大阪弁護会館で、「弁護士は民事控訴審においてどのように訴訟活動をすべきか」をテーマにしたシンポジウムが開かれました。私は、このシンポジウムを開催した委員会の委員でしたので、要点をご紹介します。
 このシンポジウムを開催したねらいは、次のとおりです。民事控訴審では裁判所の主導で事後審的運営と呼ばれる審理方式が進んでおり、当事者・代理人から不満が出ていますが、それについては近畿弁護士会連合会は2018年8月3日に民事控訴審の審理に関する意見書を発表しました。これは裁判所に対する注文でしたが、この検討をするときに、訴訟代理人である弁護士にも民事控訴審の充実のために求められることもあるのではないかという指摘があり、このシンポジウムでは代理人に求められることをまとめたものです。
訴訟代理人に求められることを拾い出すために、控訴審の訴訟活動が功を奏して逆転の勝訴判決又は勝訴的和解を得たケースを調べることにしました。会員へのアンケートで約30例の提出があり、委員会ではそれを分析しました。また、従前行われた高裁裁判長の講演録を読み、また、当日講演をお願いした中村哲・元大阪高裁裁判長の他、多数の高裁の裁判長経験者からご意見をお聞きして、参考にさせていただきました。
 なお、近弁連の意見書にあるように、原則第1回期日で結審するという今の方式が見直されれば、代理人が気を付けなければいけない点は減りますが、とりあえず、今の裁判所の事後審的運営を前提にして弁護士に求められる訴訟活動が提案されました。

2 控訴審で求められる訴訟活動
(1)早くとりかかる
一審判決の事実認定や法的解釈が納得いかないときに控訴するわけですが、控訴の理由を書いた控訴理由書を50日以内に提出する必要があります。又、第1回期日は控訴してから3か月前後で開かれます。そこで、控訴を決めたときは、すぐに控訴審での主張と追加の立証の準備にかかることが必要です。

今の控訴審は、第1回期日の前日又は数日前に裁判官3人による合議をして、心証を固めるようですから、それまでに主張と証拠を出しておく必要があります。控訴理由書の提出や証拠の提出が遅れるときは、あらかじめその旨を裁判所に申し出ておくことが大事です。

 

(2)リセットして見直す
 控訴するときは、一審での主張や立証がそれでよかったかを見直し、一度リセットして組み立てることが必要です。私の事務所では、昨年暮れに控訴審で逆転勝訴の判決を得ましたが、これは地裁では別の弁護士が担当されて敗訴し、控訴審から受任した事件でした。代理人が変わることで、主張と立証を全面的に見直し、それが功を奏したと思います。代理人が変わることは少なく、同じ代理人であることがふつうですが、その場合も、主張立証は十分であったかを虚心に検討して取り組むことが必要だと思います。

(3)追加の証拠
 控訴審で逆転勝訴した事件の多くは、控訴審で追加して証拠を出しています(関係者の証言や陳述書、あるいは文献、医師の鑑定書や学者の意見書など)。そのことが示すように、追加の証拠を出すことが控訴審で功を奏する結果につながることが多いといえます。これらの用意は一定の時間が要ることですので、控訴したときは、直ちに取りかかる必要があります。

 

(4)控訴理由書が大事
 高裁の裁判官は、独自に記録を読んで一審判決が正しいかどうかを考えると言いますが、なかには一審判決と控訴理由書を先に読む裁判官もあるようです。控訴理由書が説得力のあるものかどうかは、やはり重要です。

 

(5)第1回期日にコミュニケーションを
 近弁連の意見書は、最近は、裁判官と当事者とのコミュニケーション、意思疎通ができていないことを指摘し、第1回期日に、争点や審理の仕方についてコミュニケーションを交わすことを求めています。代理人も、第1回期日に、これらの点について発言し、裁判官と意見を交わすことが大事です。
(大阪弁護士会月刊誌2018年12月号45,46頁に今川忠弁護士がシンポジウムの概略を書いておられます)。(弁護士 松森 彬)

 

2019年1月15日 (火)

「親切な裁判」と「不親切な裁判」

 長い間、続いていた離婚訴訟が、大阪高裁の裁判官の尽力で、昨年、和解(合意による訴訟終了)により終了しました。この件で、私は、「妥当な判断」と「親切な裁判」が当事者にとって如何に有り難いものであるかを痛感しました。

 裁判は、夫が別の女性と同棲し、妻に離婚を求めたものでした。私は、妻から委任を受けました。妻は、離婚を拒否しており、裁判による離婚が認められるかという争点があったうえ、暴力や財産をめぐって事実を解明するべき問題が多く、家庭裁判所の調停と訴訟で4年かかりました。家裁は、夫婦間の財産の争いのいくつかを民事事件であるとして地裁に移送していましたので、妻は地裁での訴訟も抱えていました。家裁の判決は、妻からみると夫の言い分を不当に取り入れたものであり、妻は高裁の判断を仰ぐため控訴しました。

 大阪高裁には14の部がありますが、この事件が係属した部の裁判長は、第1回の期日に、審理の継続を決めるとともに、「時間がかかっているので裁判所で和解案を提案したいがどうか」と発言され、「和解案は、高裁の事件だけを解決する案と、地裁で係属中の事件も含めて解決する案の二つを作って提案する」とのことでした。地裁で審理中の事件も一緒でなければ当事者にとって合意による係争終了は考えにくいことでしたから、この提案は当事者双方にとって有り難いことでした。

 

 地裁に係属している裁判の準備書面と証拠は高裁にありませんので、夫側と妻側がそれぞれ書類の写しを高裁に提出し、高裁の裁判官らは、それを読んでそちらの件の和解案も考えるとのことでした。
 書類を提出して約1か月後に、高裁から2通りの和解案が双方に示されました。双方は、地裁の事件も含めて一挙に解決する和解を希望し、2回協議した結果、修正した案で和解が成立しました。

 裁判官は、公務員であり、事件をたくさん解決したからといって給料が増えるわけではありません。割り当てられた手持ちの裁判記録に加えて別の裁判の記録を読むというのは仕事を余計にすることになります。それでも、この裁判長らは、当事者が困っているだろうという思いから、手間をいとわずに係争の解決に尽力されました。
 すべての裁判官が、このように親切であれば、国民の裁判所に対する敬意と感謝、そして信頼はもっと高まると思いました。

 私は、同じこの事件で、逆に「裁判所の不親切」も経験しました。第1審の家裁の裁判官ら(合議体)は、夫婦間の或る財産問題(夫から妻への毎月一定額の支払の約束)について約2年間、審理をしておきながら、判決で、夫婦間の債権債務の存否は家事事件ではなく民事事件であり地方裁判所で審理されるべきであるとして、離婚事件では判断しないとしました。そこで、妻は地裁に改めて提訴して、一から審理することになりました。家裁の判断の当否に疑問がありますが、仮に、家裁の裁判官が、そのように解釈するのであれば、2年間の審理中に判断を示すべきであったと思います。今回は、たまたま親切な高裁の裁判官に当たったので一挙に解決ができましたが、そうでなければ、解決の遅れにつながったと思います。
 

 このように、裁判官次第で「親切な裁判」もできるのですが、「不親切な裁判」も行われています。アメリカでは、国民の裁判所に対する信頼が高いと聞きます。裁判所に行けば納得のいく手続と結果が期待できるというイメージがあるのでしょうか。最近の高裁は、何も言わずに1回で結審して、なかには逆転判決をすることもあり、弁護士には、高裁は何を考えているか、何をするかわからないので怖いという人もあります。裁判所は怖がられるところではなく、この裁判官らが実践されたように、親切で、感謝されるところであってもらいたいと改めて思います。(弁護士 松森 彬)

 

 

 

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