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2017年6月16日 (金)

最高裁判事の選び方

最高裁は、司法の柱として大事な役割を担っています。サラ金の高利の問題や公害事件、えん罪事件、あるいは今年3月に判決が出たGPS捜査の裁判など、国民の権利や生活に影響がある数々の判決を出しています。

最高裁の裁判官は15人です。わが国では、最高裁判事の選任についての法律(裁判所法41条)の定めは簡単で、「識見の高い、法律の素養のある者」から選ぶとしており、15人のうち少なくとも10人は裁判官、弁護士、検察官、大学教授など法律の専門家から選ぶとだけ決めています。15人の構成は、長い間、裁判官出身者6人、弁護士出身者4人、検察官出身者2人、行政官出身者2人、学者出身者1人でした。そして、弁護士出身判事は、日弁連が内部の推薦手続を経て複数の候補者(今回は6人)を最高裁に推薦し、そのなかから最高裁が内閣に推薦し、内閣は最高裁の推薦を尊重して任命してきました。

ところが、今年1月、内閣は弁護士出身判事の後任を決める際に、日弁連が推薦した弁護士出身の候補者(6人)から選ばず、学者出身者を選びました。この人は長い間法学部の学者で昨年弁護士登録をしたばかりの人で、実質的には学者出身です。その結果、日弁連が推薦した弁護士出身者は4人から3人に減りました。

弁護士は、民事裁判の代理人や刑事手続の弁護人などが日々の仕事ですので、もっとも国民に身近な法律家だといえます。弁護士出身の多くの最高裁判事が人権感覚豊かな判断をしたり、社会の現実を踏まえ弱者に寄り添う個別意見を述べたりしてきました。アメリカやイギリスでは、法曹一元制度といいまして、地裁の裁判官などもすべて一定年齢以上の弁護士等の法律実務を積んだ法曹から選任しています。それは弁護士等の法律実務の経験が裁判官の職務に必須あるいは有益と考えられているからです。

日本でも、昭和22年の最高裁発足時は弁護士出身判事は今より多く15人中5人でした。昭和40年代に4人になりましたが、その後50年近く、弁護士出身判事が4人務めてきました。

今の内閣(安倍晋三首相)は長年続いてきた最高裁判事の選任方法を変えたのですが、なぜ変えるのかについての議論はありませんでした。今の方法は多数の法律家を知っている弁護士会や最高裁が適任者を複数選び、それを尊重して内閣が選ぶというもので、適任の法律家を選出することができる一つの方法です。選任方法を変えるにあたって特段の議論もなく、恣意的に選ぶこともできるとなると、ときの内閣が政治的に最高裁判事を選ぶこともできてしまいます。弁護士会の司法制度を検討する委員会では、今回の選任は不透明であり、問題であるという意見が出ています。

平成13年の司法制度改革審議会意見書は、「最高裁裁判官の選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討すべきである。」としました。しかし、日弁連が弁護士出身候補者について選考手続きを設けている以外は、透明性・客観性を確保する制度整備は行われていません。最高裁判事の選任は司法が役割を果たすことができるかどうかに関わる大事なことであり、閉鎖的になるのではなく、オープンなものに変えて行く必要があると思います。(弁護士松森 彬)

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