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2016年4月の記事

2016年4月27日 (水)

最近の裁判官は人証調べを嫌がるが問題だ

この1週間の間に、大阪と京都の裁判所で、本人や第三者証人などの人証調べを嫌がる裁判官を立て続けに2件経験しました。1件は、損害賠償を求めている相手方が本人尋問を申請しているのですが、裁判官は、「聞いても結論は変わらないと思う」と言ってなかなか本人尋問をすると言わず、和解で終わらせるように言いました。相手方弁護士は、本人の言い分を聞かずに和解や判決が出ると本人の納得が得られないので困られたと思います。裁判が終わり廊下に出てから、相手方代理人は、「弁護士会で裁判官について意見を募集しているので書きたいと思うが、誰が意見を書いたかがわかるかもしれないので、実際には書けない」と言っておられました。

今日あった裁判でも、裁判官は証人調べをいやがり、出ている証拠だけで和解案ができると言って、和解で終わらせるように強く説得しました。双方の主張が大きく対立していますので、従前であれば、当然、人証調べが行われるケースだと思いますが、この裁判官は、なかなか人証調べをすると言いませんでした。

この裁判官の考えを聞いていると、事実関係の大きな点だけで結論を出し、それを左右するかもしれない要素の調べは切り捨てるという感じがしました。また、この件で、相手方は行政の許可を得ていないことや裁判で嘘の説明をしているという事実があるのですが、そういうことは無視するようでした。しかし、嘘を言っていることは、その他の主張や立証の信憑性にも関わることであり、決してないがしろにしてはいけないことだと思います。そもそも、裁判であるのに正義や不正について鈍感でよいのかと思いました。

この裁判官のしようとされている裁判は、事実関係のうわべだけで判断し、それでよいと考えておられるようです。裁判は予断と偏見を持たないようにというのが、裁判官の心構えとして必要だと思いますが、予断で出した結論を押しつけるように思いました。転勤してこられて間が無いのですが、弁護士の書いた書面だけは読んでおられるものの、証拠はきちんと見ておられず、事実関係の理解に不正確なところがありました。人証調べの前の和解がよいとまで言われましたので、その理由を尋ねしましたが、理由について特段の説明はありませんでした。私は、このケースの特徴や双方の主張が対立していることなどを言いまして、人証調べの採用を求め、最終的には人証調べの実施が決まりましたが、疲れました。この裁判官は30分位かけて双方弁護士に交互に人証調べをすることなく和解するようにと言いましたが、気の弱い弁護士や当事者は押し切られるのではないかと思います。裁判は、当事者が和解を望まない限り、判決を書くのが原則だという当然のことを認識してもらう必要があると思います。

この裁判官は二人とも経験年数は10年から15年くらいでしょうか。いずれも人証調べに消極で、判決ではなく、和解で裁判を終わらせようという雰囲気が強く、丁寧に審理をして当事者に納得がいく裁判をしようという姿勢を感じません。

数日前に、最高裁はハンセン病の患者の裁判を施設などに設けた特別法廷でしてきたことについて謝罪をしたと言うニュースがありました。裁判所も裁判官もふだん誰も公然とは文句を言わないところです。そこで、裁判所や裁判官が反省をしたり、裁判利用者の声を気にされたりすることはまず無いのではないかと思います。しかし、それは手続き上、文句を言えないからだけです。裁判官には苦情や要望の声が耳に届かないかもしれませんが、当事者、国民がすべて良しとしているわけではありません。私の経験では、当事者や弁護士にとって、一番嫌な裁判官は、いやいや仕事をしている裁判官だと思います。私は、雑誌「世界」の昨年9月号に、「民事裁判の整備を怠っている日本」の記事を書き、そこに統計でも証人調べが減っている事実を指摘しました。

当事者や証人の話を聞こうとしない裁判のやり方が、裁判官の間で増えているのではないかと、危機感を覚えます。多くの裁判官は適切な進行をされていると思いますが、中には審理をいやがり、判決をいやがり、和解で事件を終わらせようとする傾向を感じる裁判官がおられます。猛省を求めたいと思います。

裁判官がそれぞれどのような裁判をしているかを、他の裁判官は知りません。裁判官は3人ないし4人で一つの部を構成していますが、部長や所長が個々の裁判官のやり方に口を出すことはありません。それは「裁判官の独立」が保障されているためです。ただ、そのために、たとえば強引な裁判が行われたりしても、なかなか表に出にくいということがあります。このごろは公開法廷での裁判が減り、非公開の準備室で裁判が行われますので、なおさらです。

しかし、個々の裁判官は、他から批判を受けることが無い分、知人の裁判官や先輩の裁判官と経験談や意見を交換するとともに、当事者や訴訟代理人の意見に虚心に耳を傾け、自分のやり方がこれでよいかについて研鑽をすることが必要だと思います。

また、裁判所は国民に対して公正な手続きで権利を実現するという司法サービスを提供しているところですから、今の裁判の実情がどうか、これでよいかについて関心を払い、裁判官の研鑽を促すとともに、弁護士の裁判官任用や裁判官の弁護士経験を増やし、裁判官の大幅増員を図り、個々の裁判官が適切な審理ができるように努力してもらいたいと思います。そして、弁護士会は、当事者と訴訟代理人の声を汲み上げて、今の裁判の状況を世間に訴え、必要な施策の実現を働きかける必要があると思います。(弁護士 松森 彬)

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