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2016年3月26日 (土)

実話を基にした2本の映画を見ました

数か月前になりますが、実話を基にして裁判と弁護士を描いた2本の映画を見ました。

1本は、アメリカとソ連が冷戦状態にあった1957年にアメリカで捕まったソ連のスパイの国選弁護を頼まれた弁護士が、弁護を引き受け、世間から嫌がらせを受けながら弁護を全うしたという映画です。「ブリッジ・オブ・スパイ」という映画で、トム・ハンクスが主演し、スピルバーグが監督でした。

この弁護士は、5年後に、このスパイとアメリカの偵察機の飛行士との囚人交換の役を頼まれ、ベルリンの壁が作られていたベルリンに行って交渉にあたります。ベルリンの壁は、東側に住む人々が西側へ流出しないように東ドイツが1961年に作ったもので、東ヨーロッパの自由化が加速して1989年に崩壊するまで、ベルリンの街を東西に分断していました。私は2002年に旅行でベルリンに行きましたが、残されていた壁と、壁の博物館を見てきました。壁を越えて逃げようとした人が多数射殺されたと書かれていました。

このドノヴァンという弁護士は、ニュルンベルク裁判で検察官を務めた経験があるようですが、その後は保険法の仕事をしていて、国際政治や刑事弁護の専門ではなかったようです。当時、スパイの弁護をすれば、彼自身だけでなく家族も嫌がらせをうけるおそれがありました。映画では妻の心配も描かれています。それでも、この弁護士は、どんな人間にも等しく公平な裁判を受ける権利があると考えて、弁護を引き受けました。世論は死刑を求めたようですが、判決は懲役30年の刑でした。1950年代のアメリカは、マッカーシー旋風と言われた赤狩りが行われていた時代です。そういう時代背景を考えると、この弁護士の勇気と、裁判制度の意義を感じます。

もう一本は、アメリカに住んでいた82才の老女が、ナチスに接収された名画の返還を求め、駆け出しの弁護士がこれを引き受け、1998年にオーストリア政府を相手に裁判を起こし、健闘する映画です。絵は、クリムトが描いた「黄金のアデーレ」で、オーストリアのモナリザと呼ばれ、世界で最も高額な絵の一つだそうです。オーストリア政府は抵抗しますが、結局、老女に引きわたされ、現在はニューヨークの美術館にあります。映画は「黄金のアデーレ 名画の返還」という題で、老女はヘレン・ミレンが演じました。

2本ともに、裁判の持つ役割や、弁護士の仕事の意味を感じるものでした。現在も上映している映画館が全国に数カ所ですが、あるようです。DVDもそのうち出るのではないかと思います。お勧めしたい映画です。(弁護士 松森 彬)

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