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2014年8月31日 (日)

民事裁判制度の改革を進める必要

裁判の手続や制度は今のままでよいかを弁護士会では検討しています。どのような問題があるか、どのような取り組みをしているかをご紹介します。(月刊誌「大阪弁護士会」の2014年8月号に私が書いた記事を基にしています)。

 

1 「小さな司法」と国民の不満

民事裁判や家事調停などの民事司法は、市民社会に不可欠な公共的インフラです。しかし、日本では長い間、「小さな司法」の政策が取られてきました。裁判所関係の予算と人は少なく、裁判所に支払う提訴手数料は外国と比べて高く、経済的に困っている人に対する法律扶助も日本は後で返さなければなりません。先進国で返還を求めているのは日本だけです。

裁判件数が増えても、先の司法改革まで裁判官は増員されませんでした。司法改革で少し増員されましたが、最近は、また増員が止まっています。

そのような中で、裁判の満足度は低く、裁判件数は外国と比べて少ない状態が続いています。そして、実際に裁判を経験された人からは、十分な審理がされていないとの声が出ています。

前の司法改革でも、刑事裁判では裁判員制度ができたり、法律家の養成の分野では法科大学院ができたりしましたが、民事裁判の関係では大きな改革はされませんでした。弁護士会の民事裁判についての取り組みが弱かったと言えます。

そこで、日弁連(日本弁護士連合会)は、2011年5月の総会で「民事司法改革と司法基盤整備の推進に関する決議」を採択し、民事司法改革推進本部を設置しました。私はこの本部の副本部長をしています。

民事裁判と言わずに民事司法という言葉を使っていますが、これは裁判の手続だけでなく、裁判官の増員や法律扶助制度の充実など、裁判制度を取り巻く基盤や支援制度などを含めて改革を進めるためです。

 

2 日弁連の民事司法改革の取り組み

日弁連の本部が行った主な活動は、一つは、課題をまとめた「民事司法改革グランドデザイン」を発行したことです(2012年2月作成、2013年10月改訂)。もう一つは、各界の有識者による「民事司法を利用しやすくする懇談会」を設置して、そこで議論がされたことです(2013年10月)。

2014年9月20日に、民事裁判の課題と家庭裁判所の役割について第26回司法シンポジウム「市民にとって本当に身近で利用しやすい司法とは」が開催されます。

また、裁判所支部の拡充、証拠収集手続の拡充、執行制度の充実、子どもの手続代理人の充実の4点について最高裁と日弁連で協議をすることになりました。

 

3 大阪弁護士会の取り組み

大阪弁護士会では、日々訴訟代理人として裁判を経験している弁護士の声を踏まえることが大事だと考え、「弁護士アンケート調査」をしました(2013年1月)。その結果、証拠収集と執行について制度改革を求める意見が多いことが明らかになりました。今の証拠収集制度で十分であるという意見は1割しかありません。また、判決の後に行う強制執行の際に行われる「今の財産開示制度は機能していない」という意見が圧倒的です。高裁の1回結審についての不満も多数出ています(「自由と正義」2013年8月号)。

これら当事者や代理人の現場の声を重視し、裁判官の増員等の基盤整備の課題や、裁判にかかる費用の問題を含め、幅広い改善と骨太の改革が必要です。

(弁護士 松森 彬)

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