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2013年11月24日 (日)

国と国がもめたとき(国際司法裁判所)

国と国のもめごとを裁判する裁判所があります。国連が設けている「国際司法裁判所」がそれです。先日、領土問題を解決する方法としてこれまで何度か使われたという記事が出ていました。私は、どのような裁判の手続きをするのか、興味があって読みました。

裁判所はオランダのハーグにあります。主な事件は領土をめぐる紛争で、これまでに約110件の判決を出しているそうです。現在係争中の裁判は10件といいますから、国内の裁判とは全然数が異なります。それを世界の各地域を考慮して選ばれた15人の裁判官で審理するそうです。日本からは小田滋さんという東北大学の国際法の学者が長く判事を務められました。外交官の小和田恒さんが所長をされたこともあるようです。小田さんによると、判事は双方の提出する膨大な書類を読むのが仕事だそうです。

私が興味があったのは、裁判の仕方です。国際司法裁判所の裁判も、基本的にはわが国の民事裁判とほぼ同じです。双方は主張を書面にまとめて提出します。原告側と被告側が何度か書面を出し合うようです。そのうえで双方の代理人が口頭陳述をします。この手続きは公開で、裁判官が質問することもあるようです。最後は、裁判官全員が自分の見解をまとめ、それを回し読みして、それが終わった時点で合議をするそうです。判事一人ひとりが自分なりの判決案を書く点で、日本の国内の裁判と異なります。日本では地裁、高裁、最高裁いずれも裁判の件数が多いため、関与した裁判官の全員が意見を書くということはありません。3人で裁判をする高裁でも、主任の人が起案するだけです。そのため、私らから見ていますと主任以外の裁判官はどこまで記録を読んでいるのかと疑問に思うことさえあります。裁判官全員が見解を書面にすれば充実した議論と判断ができるでしょうから、大変良い方法だと思います。

国際司法裁判所は提訴から判決まで平均すると4年程度かかるそうです。審理が長引くことには批判があるようですが、他方、時間と手間をかけることが裁判への信頼に結びつく面があると考えられているようです。

国際司法裁判所は、強制力がありません。国際社会には、国家のような権力組織が無いからです。また、69カ国が参加していますが、アメリカとフランスは一度参加しながら脱退し、中国や韓国はそもそも参加していないなど、大きな国がからむ紛争では限界があるようです。しかし、この国際司法裁判所の裁判で、領土問題がいくつも解決したようです。

私は、国際司法裁判所の裁判の仕方を見て、裁判が信頼を得るために必要な手続きは共通しているように思いました。①見識や能力を見て選んである裁判官がいて、②紛争の当事者は主張を書面に書いて出し、双方は何度か書面でやりとりをし、③公開の場で口頭での陳述も行い、④主張を十分に聞いた裁判官が十分な評議をして、⑤事実の認定と法的な判断を行っているようです。日本の裁判がどこまで丁寧な審理ができているかは別にして、基本的な考え方と手続きは同じです。紛争を裁判で解決する場合の基本がそこに見られるという感想を持ちました。(弁護士松森 彬)

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