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2013年5月の記事

2013年5月 4日 (土)

最高裁で勝訴しました(不正軽油)

連休前の4月27日、最高裁から勝訴の判決が届きました。勝訴すると思っていましたが、高裁の判決から1年6ヶ月になりますので、少しやきもきしていました。最高裁の判決は、相手方の上告は法律上の上告理由に当たらないという内容で、実質的な部分は5行程度の大変簡単なものです。上告される件数は多く、それを15人の最高裁判事で担当します。結論が変わらないことがほとんどで、その場合の判決は簡単な定型のものになっています。

事件は、運送会社がトラックの燃料に使う軽油を石油業者から買っていたところ、灯油が半分入った不正軽油を納品していたことがわかりました。そこで、運送会社が代金の支払いを拒んだところ、石油業者が裁判を起こしたというものです。(このブログの2011年10月29日に高裁判決のことを書いています。この記事の右欄にある「バックナンバー」の文字をクリックして2011年10月の記事をご覧ください)。

私と事務所の若い弁護士の2人で担当してきました。最初、奈良地裁の裁判官は、代金を支払うようにとの判決を出しました。灯油を混ぜた軽油でも一応燃料として使えることなどが理由でした。しかし、石油業者が灯油を混ぜて売ったのは、軽油には軽油引取税がかかるので、税金を免れて不正に利益を得ようとしたためです。不正軽油はいわゆる禁制品で、他に販売することもできません。そこで、私たちは大阪高裁に控訴しまして、軽油と言って不正軽油を売ることは詐欺であり、契約を取消して代金の支払を拒むことができるはずだと訴えました。高裁は地裁の判決を取り消して、逆転で私たちの主張を認めました。この度の最高裁の判決は、高裁の判断を是認したものです。

いつも裁判は正しく行われていて、「誤判」は無いと思っておられる人が多いかもしれません。ある地裁の所長も、そのように言っておられました。しかし、この事件で、奈良の裁判官は、間違った判断をしました。理由は、この裁判官が新様式の判決を書く際に、争点の捉え方を誤り、要件事実に沿った判断をしなかったことにあると思われます。幸い、この地裁判決は、その後高裁で是正され、最高裁も追認しました。裁判官や学者は、高裁などで是正されているはずだと言われますが、いつもそうであるとは限りません。

誤判を正すためには手間とお金がかかります。奈良地裁は数千万円の代金支払いを命じていましたので、その仮執行を停めるために、運送会社は執行停止の保証金として数千万円の現金を供託せざるを得ませんでした。この保証金は、今回最高裁判決で勝訴しましたので、ようやく会社に戻ってきますが、約2年間、資金繰りに使えませんでした。誤判があると、市民、企業は大きな被害を蒙ります。裁判所も弁護士会も、誤判がある現実を直視して、その心構えで裁判にあたるとともに、制度の改善に取り組む必要があると思います。(弁護士松森 彬)

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