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2010年11月の記事

2010年11月28日 (日)

弁護士費用はいくらくらいか

「弁護士に依頼したときの費用は、どのようにして決まるか。また、いくらくらいか。保険はないのか。お金の無い人はどうするか。」

先日(11月1日)、私は、大阪弁護士会が市民の意見を聞くために設けている「大阪弁護士会市民会議」の会議で、市民委員の皆さんに弁護士費用の説明をしてきました。ちなみに、弁護士会の市民会議は4年前に設置されましたが、私は、当時、設置を検討するプロジェクトチームの座長を務めました。現在、委員は、学者、ジャーナリスト、市民団体、経営者、医師などで構成されています。

弁護士費用は、正式には弁護士報酬と呼ばれますが、基本的には、依頼者と弁護士との間の合意で決められます。外国でも、ドイツは法定化していますが、ほとんどの国は合意で決めています。その際、標準となる額を決めておくか否かはいろいろです。わが国は、2004年までは弁護士会で標準となる額を規程で決めていましたが、規制緩和の動きにより弁護士会の規程は廃止され、現在は、各法律事務所で「報酬基準」を設け、それに基づいて個々に協議して額を決めることになっています。

大阪弁護士会は2008年に各事務所の報酬基準を調査しました。従前の弁護士会の規程とほぼ同じように定めているところが大半でした。裁判などの場合は、最初に支払う「着手金」と終わったときに成果に応じて支払う「報酬金」があります。事件の難易や係争額によって異なりますが、着手金は、8%から5%程度、報酬金は得た経済的利益の16%から10%程度でしょうか。

実際にどれくらいであるかについては、種々の係争を想定した日弁連の調査があり、日弁連と大阪弁護士会のホームページに掲載していますので、興味がありましたら一度ご覧ください。

今一番問題であると思うことは、国がお金の無い人のために用意している法律扶助の予算が極端に少ないことです。法律扶助は、経済的に余裕が無い人のために弁護士費用や裁判所費用を国が出す制度です。お金が無い人を助ける制度ですから、外国では当然に給付制ですが、日本だけは全額返還させることになっています。そのため、お金の無い人は裁判を思いとどまるという結果になっています。また、弁護士が受ける報酬も低額です。

国が民事法律扶助に出している予算額を国民一人当たりの額で比べますと、日本はイギリスの80分の1,オランダの40分の1,ドイツの18分の1,フランスの13分の1という少なさです。自力救済を法律で禁じているのですから、被害にあった国民は司法を利用するしかないのですが、お金の無い国民が権利を回復し、あるいは実現することについて、わが国は冷淡です。

また、ヨーロッパでは、いざというときに備えて弁護士費用保険の制度が普及していて、ドイツでは国民の半分が保険に加入しているようです。日本でも、ようやく自動車保険の特約として弁護士費用保険ができました。そこで、交通事故にあったときに、この保険を利用して裁判をする人が増えています。医療の分野では国民皆保険が実現していますが、司法の利用についても、保険制度を整備する必要があると思います。(弁護士 松森 彬)

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2010年11月25日 (木)

最近の労働問題

昨日、ある団体の研修会で「最近の労働問題」について話しをしました。

不況が長引き、解雇、残業代、退職金などの問題が増えています。全国の労働基準監督署が受けた相談のうち、労使間で既に紛争になっている「民事上の個別労働労働紛争相談件数」は、8年前は約10万件でしたが、年々増加し、昨年度(平成21年度)は、24万7302件と、2倍以上になっています。

また、会社が残業代を払わないために労働基準監督署が、昨年度指導した件数は、100万円を超えた会社が1221社あり、対象労働者は11万人、割増賃金の総額は116億円(1社平均950万円)にもなるようです。

昨日の研修会では、最初に平成22年4月施行の労働基準法の改正の話しをしました。1か月に60時間を超える残業の場合、割増の率が引き上げられました。長時間労働を防止するためです。中小企業では適用が猶予されていますが、今後、長時間労働の防止と残業代は、各会社の課題になると思います。

解雇の紛争も増えています。解雇がどのような場合に認められるかは、ケースバイケースで、労使双方にとって難しい問題です。労働契約法ができ、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当であること」が要件と明記されましたが、実際のあてはめでは、解釈が分かれることがしばしばです。経営不振の場合の整理解雇について、判例は、解雇を回避する努力をどれだけしたか、協議や説明を十分にしたかなどの要件を考えていますが、他の場合にも当てはまるように思います。

また、就業規則における解雇理由の定め方を話しました。就業規則は、労使の関係を決める基本となるものですが、ふだん読まれることが少ないせいか、条項などが整備されていないこともあります。たとえば、解雇事由はきちんと定めておくことが必要ですが、会社設立のときに作ったままで、どうかなと思う就業規則もあります。そのようなときは、解雇事由が有るか無いかから問題になります。

やはり、ふだんから就業規則や労働契約はきちんと整備しておくことが必要です。研修では、そのような話しを結びにしました。 (弁護士 松森 彬)

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