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2010年8月の記事

2010年8月31日 (火)

証言の重要性

今日は、証言の重要性を感じた一日でした。

午前中に、1年以上かかって審理をしてきた一つの裁判が和解で解決しました。双方の主張はかなり対立していましたが、先日、関係者の証人尋問を行い、それに基づいて裁判官が和解案を示し、双方がそれを承諾して、解決しました。証人尋問が終わっており、話がまとまらないときは判決が出るところまで来ていましたので、裁判官の和解勧告が、大きな意味を持ちました。

また、午後は、別の裁判で、証人尋問をしました。相手方は、これまで裁判所に提出した書面では、肝心なところをぼかし、あるいはこちら側で把握しているのと異なる主張をしていましたが、今日の法廷での証人尋問では、こちら側が事前に聞いている話を認める証言をしました。

これは、しばしばあることです。弁護士が書く準備書面や本人名義で書く陳述書では、会社や家族あるいは弁護士の意見などに影響されて、不利なことはぼかしたり、隠したりする傾向があります。しかし、法廷での証言となると、事実を全く否定するような発言はしにくいようです。こちら側の人のことも気になるのか、真実と思われる話が出てくることがしばしばです。

最近、裁判所は裁判の迅速処理を急ぐあまり、証人尋問の数を減らしたり、時間を短くし、代わりに、陳述書という書面を代用することが増えています。真実発見のためには、直接話しを聞くことが、やはり重要であると感じた一日でした。(弁護士 松森 彬)

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2010年8月 1日 (日)

裁判の迅速化と問題点

司法改革の一つで、「裁判迅速化法」という法律ができています。これは、遅いと言われる裁判を早くするためにできた法律です。迅速化が進んでいるかを検証する委員会が、最高裁にできていまして、裁判官、弁護士、学者などで構成されています。

先日、その委員会の皆さんが大阪の実情を聞きに来られ、大阪弁護士会の5人の弁護士が説明しました。私は、証拠調べが減っている状況を説明し、迅速化のためには裁判所の人的物的基盤の整備が必要であるという報告をしました。

裁判の期間はかなり短くなっていますが、他方で、証人尋問が減り、現場検証や専門家の鑑定も減っています。

大阪弁護士会(司法改革推進本部の裁判所部会、地域司法部会)は、大阪地方裁判所に1992年(平成4年)から2008年(平成20年)までの資料を求めました。

それによりますと、この16年の間に裁判件数は増えていますが、増加に合わせるように証人尋問をしない裁判が増えています。すなわち、大阪地裁の民事裁判は1992年は1万3818件、2001年は1万7573件、2008年は2万0881件と増えていますが、証人尋問をしない裁判も、1万0765件、1万4826件、1万9149件と増加しています。3000件増えれば、証人尋問をしない裁判も3000件増えるという具合です。

証人尋問をする裁判の割合が減っているだけでなく、実数自体が減っています。また、証人尋問をする場合も証人の数が減っています。

すなわち、1人以上の証人尋問を実施した裁判は、1992年は、22%(1万3818件中の3053件)ありましたが、2001年は、16%(1万7573件中の2747件)に減り、2008年は、8%(2万0881件中の1732件)にまで減っています。

証人を1人だけ調べた裁判について見ますと、1992年は、12%(1700件)ありましたが、2001年は、8%(1431件)に減り、2008年は、5%(880件)に減っています。 また、証人を3人調べた裁判で見ますと、1992年は、2.5%(351件)ありましたが、2001年は、1.8%(325件)に減り、2008年は、1.0%(218件)に減っています。

現場を見に行くなどの検証は、1992年は、74件の裁判で行われましたが、2001年は、26件、2008年は、16件と、どんどん減少しています。写真、ビデオを出すことが増えていますが、それでは心証がとれないこともあります。また、専門家の意見を求める鑑定も行われなくなっています。1992年は、711件ありましたが、2001年は、226件に減少し、2008年は、145件と、減少しています。

証人尋問、検証、鑑定などが減っている原因としては、争点の絞り込みが行われるようになったことや、かつて多かった不動産事件が減っていることなどが考えられますが、それだけではなく、迅速化の弊害も考えられます。現に、弁護士からは、必要な証人までが採用されないという声が出ています。

裁判の迅速化は必要で、法曹三者の努力で、審理期間はかなり短くなっています。しかし、そのために、充実した審理と適正な裁判という、もう一つの大事な目標がないがしろにされては何にもなりません。裁判官を大幅に増やし、裁判所の人的物的基盤を整備して、必要な審理を削ることがないように、改革を進める必要があります。(松森 彬)

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