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2010年3月の記事

2010年3月30日 (火)

3月は判決が集中  

今月は、私が訴訟代理人をしている裁判で、判決が4件出ました。3月末は裁判官の転勤時期で、転勤前に判決を言い渡そうとされたために集中したと思います。いずれも双方の主張が真っ向から対立していて、少し難しい裁判でしたが、こちらの言い分を認めてもらうことができました。

1件目は、相手方は会社に多額の請求をしていましたが、請求の原因となる事実が本当にあったのか疑問で、虚偽の可能性があった事件です。裁判所は、裁判の途中に、予備的に会社は過失を認めておいてはどうかという意見を言いましたが、私は、予備的にせよ責任は認めるつもりはないと主張しました。判決では、会社に全く責任は無いという判断でした。裁判官には時々強引な指揮をする人がありますが、毅然とした方針を取って良かったと思っています。

2件目は、ある会社の車が交差点に入ったところ赤信号で突入してきた車と衝突し、その反動で近くの建物を壊したという事故で、建物所有者から賠償請求を受けていた事件です。こちらの会社の車は速度違反がありましたが、そのことと事故との間に因果関係は無いと主張していました。裁判所は、こちらの主張を認め、責任は無いという判決を出しました。

3件目は、車のメーカーが修理サービスを突然打ち切ると言ってきましたので、こちらの当事者は修理サービスを続けるように命じる仮処分を申し立てた事件です。昨年末に裁判所は申し立てを認める決定を出しましたが、メーカーは異議(不服申立)を申し立てていました。異議に対する決定でも当方の言い分が認められ、修理サービスは続けられることになりました。

4件目は、店の経営権が争いになっていた事件です。出資は全部こちらの当事者がしていましたが、便宜的に会社を設立していて、その社長は相手方がなっていました。裁判所は、全体を実質的に見て、こちらの経営権を認めました。

いずれも、典型的な裁判ではなく、手間がかかりました。判決結果の予想はだいたいつきますが、それでも期待どおりの言い渡しがあるとホッとします。お客様に喜んでいただき、仕事冥利を味わえる瞬間です。もっとも、依頼者の方とその話をしたすぐ後には次の仕事がありますので、余韻を味わっている暇はありません。(松森 彬)

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2010年3月27日 (土)

起訴を決める検察審査会の面目躍如

2005年7月の福知山線脱線事故で、JR西日本の歴代社長3人が業務上過失致死傷罪で起訴されることになりました。検察庁は、鉄道本部長だけを起訴し、歴代社長については、「安全対策の権限を鉄道本部長に委ね、カーブが危険だという認識がなかった」として、不起訴としていました。これに対して、神戸の検察審査会は、3月26日、「危険性を認識していなかったとは考えられず、最優先に自動列車停止装置(ATS)を整備すべき義務を怠った」と結論づけ、起訴するよう議決しました。

検察審査会は、戦後、民意を反映させるためにできた制度ですが、決定に強制力がなく、その点で不十分でした。この度の司法改革は、国民の司法への参加が重要な柱で、「裁判員制度」が最たるものですが、同じ目的で検察審査会が強化されました。起訴すべきとの議決を2度すると、裁判所が指定した検察官役の弁護士が起訴することになりました。兵庫県明石市の歩道橋事故に続き、2例目です。

検察幹部は「審査ではなく、歴代社長を無理やり法廷に引きづりだそうとしている」と語ったと、新聞に出ていました。確かに、現在は起訴は抑制的で、無罪になる可能性がある事件は起訴していません。その結果、判決で有罪になる率は99%を超えます。しかし、検察官にしか起訴の権限がありませんので、公害事件や贈収賄事件で、市民から見れば起訴されてもよいのではと思う事件でも、起訴されないということがありました。

外国では、検察官以外にも起訴の権限を認めています。たとえば、アメリカでは、市民から選ばれた大陪審が起訴を決めることができます。イギリスでは、すべての人に起訴の権限を認め、フランスでは、被害者に起訴の権限を認めています。

昨日は、足利事件の冤罪被害者である菅家利和さんに無罪判決が出ました。庶民が、誤って起訴されるようなことがないように、起訴は慎重であるべきですが、他方で、これまでの検察は、ややもすると政治家や大企業などに対して甘いのではないかという意見があります。議員秘書や部下だけが処罰されることは、しばしばです。

私は、検察審査会が、部下に責任をなすりつけることは認めないという市民感覚で結論を出した点に大きな意義があると思います。この件が最終的に有罪になるか無罪になるかは、これから裁判で明らかになりますが、権力を持つ側に問題があっても、これまでならうやむやにされた事件が、これからは公開の場できちんと審理されることが増えると思われます。装いを新たにした検察審査会の面目は躍如たるものがあり、司法改革の成果が実を結びつつあると思いました。(松森 彬)

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2010年3月 7日 (日)

裁判所委員会をご存知ですか

司法に国民が参加する制度として、刑事裁判に「裁判員制度」ができたことは、多くの人が知っておられると思いますが、「裁判所委員会」という名前を聞かれたことはありますか。

裁判所委員会は、裁判所の運営に国民の声を反映させるため、2003年に全国の裁判所に設けられました。これまでの裁判所は国民から距離があると言われてきましたが、各地の裁判所の運営に国民の意見を反映させ、国民主権の裁判所にすることがねらいです。大阪地裁委員会の場合、マスコミ、学者、地方自治体、消費者相談員など市民12人と、弁護士、検事各1人、裁判官2人で構成されています。

近畿弁護士会連合会は、毎年、近畿各県を回って「みんなで育てよう裁判所委員会」というシンポジウムを開いています。今年は3月6日の土曜日に和歌山で開かれました。私は、大阪弁護士会の推薦で、1期目と2期目の大阪地方裁判所委員会の委員をしましたので、シンポジウムに参加してきました。

関西学院大学の丸田隆教授の講演や、和歌山の裁判所所長の報告などがあり、その後意見交換がされました。各地の裁判所委員会では、裁判員裁判や、裁判所の受付、案内などが取り上げられ、その結果、改善が図られたこともあるようです。議論は、裁判所のホームページに掲載されていますので、一度、ご覧ください。

日弁連が全国の元委員に対して行ったアンケートでも、59人の回答のうち55人が「委員になって良かった」という感想ですから、制度自体に意義はあると思います。ただ、6日のシンポジウムでは、開催回数が少ないことが問題になりました。年2回と少ないところもあり、「前の議論を忘れてしまう」という声が出ていました。裁判所は、予算や準備の手間を理由に回数を増やさないようですが、少なすぎると制度は形骸化します。

アメリカのニューヨーク州などでは、コートモニターという住民の任意団体があり、ボランティアで裁判所の調査や提言をしているようです。日本でも、裁判所委員会の活性化を図るとともに、もっとウェブを利用するなどして、裁判所や司法に対する国民、利用者の声が高まっていけばいいなと思います。(松森 彬)

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