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2010年2月の記事

2010年2月27日 (土)

誰が裁判官になるか

裁判官には、どのような人がなっていると思われますか。日本では、ほぼ全員が、大学の法学部を出たあと司法試験と司法修習を経て25歳くらいで裁判官になり、定年まで裁判所に勤務するというのが普通です。一般の公務員と似ていますので、「キャリア制」といいます。

しかし、アメリカやイギリスでは、裁判官は全員が弁護士や学者の経験者から選ばれます。大学を出てすぐに裁判官になるのではなく、法律家として経験を積ませてから、適任の人を選ぶというやり方です。この方式を「法曹一元」と言います。

二つの方式には、どのような違いがあるのでしょうか。裁判官は独立して判断することが必要ですが、役所に務める公務員のようなシステムですは、上司の意向を考えたり、出世を考えたりして官僚的になる危険があります。一定の基準があるものの、裁判官の給料、昇給、任地、裁判長の選任などは最高裁事務総局が決めています。実際にも転勤や給与などで差別される人があり、裁判官は最高裁の意向を気にして裁判をする危険があります。

そこで、弁護士会は、今のシステムではなく、弁護士、検事、学者などの経験者から裁判官を選ぶ「法曹一元制度」を提言してきました。

ただ、今回の司法改革でも再び法曹一元の導入は見送られ、弁護士から裁判官を多数採用するようにするということだけが決まりました。また、調停制度を充実させるために、民間の調停委員のほかに、弁護士が非常勤で調停役の仕事をする調停官という制度を設けました。

2002年に弁護士任官の新制度ができたのですが、これまでに常勤の裁判官に任官した弁護士は合計で46人しかなく、なり手が少ないことが一番の問題です。任官者は年間6~8人程度に留まっています。非常勤の調停官は、弁護士を開業しながらできますので、順調に増えていまして、現在、約120人の弁護士が調停官の仕事をしています。

昨日、大阪の弁護士会で、近畿の裁判所で調停官をしていた弁護士の経験談を聞く会が開かれ、出席しました。非常勤の調停官から常勤の裁判官になる人もあり、非常勤裁判官の制度が少しは弁護士任官制度を拡大する橋渡しの役割を果たしているとは思います。しかし、常勤の裁判官は、法律事務所をたたんで行かなければならず、10年の任期が終わったあと弁護士に戻る場合の事務所の確保などの問題もあって、希望者を待っているだけでは、大幅な拡大は難しいと思います。法曹一元を実現するには環境整備など多くの課題を解決する必要があります。

弁護士は代理人として国民の権利が実現するように努力しますが、最後に判定をするのは裁判官です。誰がどういう選任方法で裁判官になるのがよいか、国民の皆さんによる幅広い議論をお願いしたいと思います。(松森 彬)

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