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2009年7月の記事

2009年7月29日 (水)

「気骨の判決」を読んで

戦争中に、司法の独立を守った大審院の裁判官たちの話しを読みました。司法の独立といえば、明治時代の大津事件のときの児島惟謙大審院長が有名ですが、この話しも、もっと知られるべきだと思います。

昭和17年の衆議院選挙のとき、内閣と軍部は、推薦候補だけを当選させて、大政翼賛会一色に塗りつぶそうとしていました。片山哲、鳩山一郎、芦田均、三木武夫など、戦後首相になった人なども、政府に従わないとして推薦されませんでした。

鹿児島で、町長や警察署長などが組織的に選挙妨害と干渉をしたのに怒った住民が、大審院に選挙無効の訴訟を申し立てました。担当した大審院の吉田久部長は、他の4人の判事と鹿児島に出向いて、申請があった200人近い証人調べを行い、知事まで尋問をしています。

吉田判事は殺されるかもしれないと思い、遺書を書いて出張したようです。東条英機首相は、その後、大審院の裁判官を集めて、戦争の勝利なくして司法の独立もないと恫喝したと言います。そんな中で、吉田久判事は、昭和20年3月、翼賛選挙は無効だという判決を言い渡します。そして、圧力があったのか、4日後に判事を退職します。

民主的な仕組みがことごとく壊されていたなかで、気骨ある裁判官の話しは、すごいと思いました。

この本を書いたのは、NHKの記者で、本は、清水聡「気骨の判決」(東条英機と闘った裁判官)(新潮新書)です。私は新幹線の中で読みましたが、読みやすい本です。

なお、この話しは、今年8月16日(日)にNHKで「気骨の判決」というドラマにして放映されるそうです。

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2009年7月18日 (土)

民事法律扶助について(新聞に投稿)

経済的理由で弁護士への依頼や裁判の利用ができない人のために国が費用を出す制度が「民事法律扶助」です。どこの国にもありますが、日本は、経済的弱者に大変冷たい制度になっています。先進国は国が裁判などにかかる費用を出すのですが、日本だけは貸付で、返さなければなりません。

「政府に求めるものは何か」という世論調査で、一位は、「年金、医療、介護など」の整備を求める声でした。これらは、社会保障として整備しなければというのが世論になっています。法的なトラブルや権利侵害に遭ったときの問題は、同様に社会保障として整備されるべき大事な問題ですが、民事法律扶助の整備は、国民に知られていないこともあり、大変遅れています。そのために法的救済をあきらめる人さえあります。

政権が交代になる可能性が出てきていますが、各政党は、どのような施策をかかげるかを現在検討中です。日弁連は、各政党にセーフティネットの整備として民事法律扶助の改革を求めていますが、まだ、返事がありません。私は、各政党が民事法律扶助の改革をマニフェストに取り入れることを求めて、投稿をしました。

朝日新聞(大阪本社版)の7月18日(土)朝刊の「私の視点」に、「司法の利用ー民事法律扶助の抜本改革を」という記事が出ていますので、お読みいただけると幸いです。

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2009年7月 4日 (土)

警察が犯罪を作った ー 志布志事件

新聞記者が書いた「冤罪を追え」(志布志事件との1000日)(朝日新聞出版)を読みました。

志布志事件とは、警察が事件をでっちあげ、選挙で買収、被買収をしたとして鹿児島県志布志の13人が起訴された事件です。4年後の平成19年に全員が無罪判決を受けましたが、この間に人生が大きくくるったひとも大勢おられます。概略は知っていましたが、本を読むと、この事件のひどさがわかります。

勾留期間が異常に長いのです。一番長い県議会議員は395日で、次はその奥さんの273日間です。被告全員が自白を強要され、自白をしないと保釈が認められず、うそでも自白をすると、また保釈が認められないという「人質司法」が行われました。強要され、ウソの自白を6人がさせられます。

刑事は、両足首を持って「お父さんはそういう息子を育てた覚えはない」と書かれた紙を無理やり踏ませ、「親を踏みつける、血も涙もないやつだ」と言い、自白を迫りました。キリスト教弾圧の踏み絵に似ています。

新聞社が連載を始めると、警察は、情報源をつかもうと、記者に尾行までつけます。記者たちは、捕まらないように「交通違反をしない、立ち小便もしない」などと申し合わせて、権力と闘うことを誓います。

私たち法律家の仕事も、場合によっては、そういう覚悟が必要です。そのために弁護士には弁護士自治(懲戒権は国ではなく、弁護士会にあります)が認められています。警察のひどさと、記者魂を改めて感じた1冊でした。

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